子育ての悩みや教育費などお金の悩みを解決する、「子育て診断士 & 1級FP」の瀬下澄江です。
今日は、”待つこと”と”がまん”が子どもの可能性を伸ばすについてお話します。
前回は、『問いかけ』のお話をしました。
“前向きな心”を引き出す問いかけとは、決して子どもの口から無理にことばを引き出すことではありません。もし、問いかけても子どもの口が重いようなら、子どもから言葉が出てくるまで“待つ”ということも大切なことです。特に、叱られるようなことをしてしまったときにはなおさら“待つ”ことが大切です。
そんなときには決して焦らずに、今は『考える時間』と割り切って、辛抱強く待ってあげるようにしましょう。
大人であるあなたでも、自分なりに考えた大切なことを相手に伝えるときには、言葉を選んで慎重に話しますよね?それは、子どもも同じことです。まして、表現力がまだつたないわけですから、たとえ言いたいことが頭に浮かんでも、それを言葉にするまでに時間がかかります。ついイライラしそうな気持ちは分かりますが、ぐっとこらえて、じっと“待つ”ことも、子どもの成長を促す上で大変重要なプロセスです。
なぜなら、この時間がまさに『考える時間』になっているからです。
「お母さんにどう伝えようか」
「何を言えば、お母さんに伝わるだろう・・・」
こうやって考える時間を与えてあげることが、思考力を深めるトレーニングになります。
こういうトレーニングを何度も繰り返しながら、やがて自分の意見をしっかり言える子に成長していくのです。そう頭では分かっていても、ついイライラしてしまうのが親心・・・まして、叱るような場面だと、なかなかがまんができませんよね。
ついカッとして、大きな声で叱りつけてしまう前に、まずは深呼吸してみましょう。
何もしなくても、『待つこと』『がまんすること』、そして暖かい気持ちで見守ってあげることが、子どもの成長の“促進剤”になるのですから。
●『考える時間』を与えてあげること
子どもの言葉を引き出そうとする場面は、叱るようなときだけではありませんよね。
「この本、どこがおもしろかった?」
このように子どもの知性を育みたい気持ちで、問いかけることがあると思います。でも、これが子どもにとってはわずらわしいときもあることに注意しなくてはなりません。
子どもは、本を読み終わって、言葉では言い表せない余韻にひたっているものです。頭の中で想像をふくらませたり、自分なりの考えを整理しているかもしれません。
そんなときに、テストの答えを求めるように聞かれたら、どうでしょうか?
子どもは、お母さんに嫌われたくないものです。だからこそ、無理に言葉を引き出そうとすると、お母さんが喜びそうな感想をポツリと口にしたりします。
これは、お母さんが『考える時間』を与えずに、強制終了してしまったようなものです。
焦る気持ちが、せっかくの『考えを深める機会』を奪ってしまっているのです。
子どもが心の中にある思いを自分の言葉で表現するまでには、想像以上にたっぷり時間がかかるということを忘れないようにしましょう。
●『自分で考える力』を育むために
子ども自身の『考える時間』を奪ってしまうと、子どもは、考えないでしゃべってしまうクセがついてしまいます。
さらには、“考えること”が面倒になります。
この“考える”という行動が、その後の学力にも大きな影響を与えます。
例えば、国語では学年が上がるにつれて、読む文章や作品が難しくなっていきます。難しい文章や作品を理解するには、しっかり読み込む精読力が求められるようになります。精読力とは、いわば“考えながら”読む力です。自分で考える力がなければ、評論文の筆者の主張も、物語の主人公の心情も、きちんと読み解くことはできません。
ほかの教科でも、“考える”力が必要です。
算数の計算問題を間違えてしまったら、それがなぜ間違えてしまったのかを考える力。
理科の実験で知った現象を、なぜそのようなことが起きたのかと考える力。
社会で知った出来事を、なぜそのようなことが起きたのかと考える力。
これらはすべて『自分で考える力』なくしてはできないことです。そして、『自分で考える力』は大人になっても求められ続けます。
仕事でミスをしてしまったときに、なぜそのようなことが起きてしまったのかを考える力。
より効率的に作業を進めるときに、どのようにしたらうまくいくのかを考える力。
「人間は考える葦である」という言葉がありますが、『自分で考えること』は人間らしく生きるために大切な習慣なのです。
『自分で考える力』を育むためには、子どもに自分なりの言葉で表現させることが大切です。そして、お母さんには自分なりの言葉を口にするまで「がまんする力」が求められるのです。